ボルドーで起きた大きな山火事、ワインへの影響は?
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2026年7月の終わりごろ、フランス南西部で大きな山火事が起きました。
場所は、ボルドーワインで有名なジロンド県。この地域だけで、東京ドーム約8,500個分にあたる約4万ヘクタールが燃えてしまいました。フランス全体で見ても、今年燃えた面積はこれまでで一番多く、22万人以上の方が避難する事態になっています。
「ボルドーワイン、大丈夫なのかな?」と気になった方もいらっしゃるかもしれません。今日はこのニュースについて、今わかっていることを、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。
まず、畑は無事です
一番お伝えしたいのは、ボルドーの有名な畑(メドックやサンテミリオンなど)そのものは、火事の直接の被害を受けていないということです。
火事が起きたのは、畑から15〜20kmほど離れた森でした。ワインの畑への影響が心配になるのは、だいたい500m以内に火が近づいた場合と言われているので、距離としてはかなり離れています。
ただ、一部の畑では3日間ほど煙に包まれた場所もあったそうで、まったく無関係とは言い切れません。ボルドーの街の上にも、もくもくとした煙が広がっていたそうです。
本当に気になるのは「煙のニオイ」
畑が燃えていなくても、実はもうひとつ心配な点があります。それが「煙のニオイがブドウに移ってしまう」という問題です。専門用語では「スモークテイント」とか「燻煙汚染」と呼ばれています。
これがちょっと厄介な現象で、こんな仕組みになっています。
- 木が燃えると、煙の中にニオイのもと(フェノール類)が出てくる
- それがブドウの皮にくっつく
- でも、この時点ではまだ甘いブドウの糖とくっついていて、匂いも味もしない
- ワインを造る過程(発酵・熟成)でだんだん分解されて、少しずつ「煙くさい味」として出てくる
つまり、今収穫したばかりのブドウを食べても、煙の影響があるかどうかは分からないんです。ワインになって、しばらく寝かせてみないと本当のところは見えてこない、というのが正直なところです。
しかも今回、タイミングも良くありませんでした。火事が起きたのは、ちょうどブドウが色づき始める大事な時期。ブドウが一番、煙のニオイを吸い込みやすい時期に重なってしまったそうです。
「気づく人」と「気づかない人」がいる
面白い研究もあります。アメリカの大学の実験によると、ソムリエのような専門家は、ごくわずかな煙のニオイでも敏感に感じ取って「これはダメだ」と判断する傾向があるそうです。
一方で、普通に飲む分には、少しの煙っぽさは「複雑な味わい」として気にならない、むしろ好きという人もいるのだとか。
ただしこれには続きがあって、「これが煙のニオイですよ」と一度教えてもらうと、普通の人でも急に気づけるようになるそうです。知っているかどうかで、感じ方がガラッと変わるということですね。
樽で熟成させたワインにも、実は似たようなスモーキーな香りが自然に生まれることがあります。そちらは美味しさのひとつなのですが、「良い樽の香り」と「煙害による嫌なニオイ」を見分けるのは、実はプロでも簡単ではありません。この違いを見極めてお伝えできるようになることも、私たちソムリエの大事な仕事だと思っています。
なぜこんな山火事が増えているのか
ちょっと専門的になりますが、背景にも触れておきます。
今年の冬、フランスは雨が多くて、草木がぐんぐん育ちました。ところが春から夏にかけて、一気に記録的な猛暑と乾燥がやってきたんです。育ちすぎた草木が、あっという間にカラカラに乾いて、燃えやすい状態になってしまった、というわけです。
「雨がたくさん降ったあとに、急に暑くなる」という極端な天気の振れ幅は、地球温暖化が進むほど起きやすくなると言われていて、研究者によると今回のような火事が起きる確率は、以前の2倍以上になっているそうです。
ブドウの収穫時期もどんどん早まっていて、今年はフランスの一部地域で7月中旬というかなり早い収穫が始まったところもあります。今回の山火事は、こうした気候の変化と切り離せない出来事のようです。
今、正直にお伝えできること
長くなりましたが、まとめるとこんな感じです。
- ボルドーの有名な畑そのものは、火事の直接被害を免れている
- でも、煙のニオイが移っているかどうかは、まだ誰にもわからない
- 過去(2022年)にも山火事があったが、そのときは心配に反して良いワインができた
- とはいえ「山火事があった年」というイメージが、後々のワインの評価に影響することもありうる
正直なところ、2026年のボルドーワインがどうなるかは、私たちにもまだわかりません。答えが出るのは、数年先にワインが実際にグラスに注がれたときです。
だから今は「危ない」でも「大丈夫」でもなく、「これからじっくり見守っていくもの」として捉えていただければと思います。もし数年後にこの年のボルドーワインをご紹介する機会があれば、こういう背景も含めてお話しできればと考えています。