オリンピックの勝者に贈られた?イタリア最古のワインの一つが、新しい称号を手に入れた話

イタリアの南、長靴の「つま先」にあたるカラブリア州に、「チロ」という赤ワインがあります。実はこのワイン、2500年以上前から造られていると言われる、イタリアでもとりわけ古いワインの一つです。

そのチロが2025年7月、イタリアワインの格付けで最も上のランク「DOCG」を獲得しました。カラブリア州にとっては初めて、イタリア全体で見ても78番目のDOCGです。

2500年前、オリンピックの優勝者に贈られた?

チロの物語は、紀元前8世紀までさかのぼります。ギリシャから来た人たちが、今のチロ・マリーナのあたりに町を作り、このあたり一帯を「エノトリア(ワインの地)」と呼びました。

ここで造られたワインは「クリミサ」と呼ばれ、地中海の広い地域で評判になったそうです。言い伝えでは、古代オリンピックで勝った選手にこのワインが贈られたとも言われています。本当にそうだったかを今から確かめる術はありませんが、それくらい昔から、この土地とワインが結びついていたということです。

まず「チロ」とはどんなワインか

チロは、カラブリア州の看板品種「ガリオッポ」というブドウから造られる赤ワインです。今回DOCGになった「チロ・クラッシコ」では、このガリオッポを90%以上使うこと、そして国際的に有名なブドウ(カベルネやメルローなど)を一切使わないことが決められています。

熟成にも時間がかかります。最低36カ月、そのうち6カ月は木の樽で寝かせなければいけません。瓶詰めも、決められた産地の中でしかできません。

畑の作り方にも決まりがあります。1ヘクタールあたりのブドウの収穫量には上限があり、木の植える密度にも下限があります。量よりも質を大事にする造り方が、ルールとしてはっきり書かれているということです。

カラブリア州にとって、これが初めて

チロは1969年、カラブリア州で最初のDOC(その下のランクの格付け)になったワインでした。それから半世紀以上たって、ようやく一番上のDOCGにたどり着いたことになります。

今回のDOCG認定を実現させたのは、「チロ・エ・メリッサ保護協会」という生産者団体です。会長のカルロ・シチリアーニ氏は、「これは何年もかけた、地域に根ざす努力と、厳しさと、先を見る計画が積み重なった結果だ」と話しています。そして「DOCGはゴールではなく、新しい段階の始まりだ」とも語っていて、畑の景観を守ることや、造り手の技術指導、産地の情報発信にこれからも力を入れていく方針だそうです。

ソムリエとして思うこと

カラブリア州は、ピエモンテやトスカーナ、ヴェネトのような有名産地と比べると、まだまだ知名度が高いとは言えません。そんな産地が、派手なブランド力に頼らずイタリアワイン格付けの最高ランクを勝ち取ったことになります。

量を減らして質を追い求める。決められたブドウだけを使う。国際品種に頼らない。今回の規定を読むと、そうした選択を地域の生産者みんなが同じ基準として守れる体制を、時間をかけて作り上げてきたことがうかがえます。知名度ではなく、畑と醸造の中身で評価をつかみ取った。今回のDOCG認定の意味は、そこにあるのではないでしょうか。

おわりに

次にイタリアワインの棚で「チロ」という文字を見かけたら、そのボトルの向こうに、2500年以上前のオリンピックの選手や、今この瞬間も畑を守っている造り手たちのことを、少し思い出してみてください。

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